ユーロの動向分析:なぜ賢い投資家はEUR/JPYに注目しているのか?

外為交差盤の隠れた金鉱

多くの人はユーロ/ドルやドル/円の直物取引だけを知っているが、実はユーロと円の交差盤(EUR/JPY)にはより大きな機会が潜んでいる。ヨーロッパと日本は世界経済の二大柱であり、それぞれの金融政策は大きく異なる。これこそトレーダーがアービトラージできるポイントだ。

特に、ユーロの動きはドルから比較的独立しており、EUR/JPYは特定の時間帯に直物をはるかに超えるボラティリティを示す。2023年3月に欧州中央銀行が利上げを発表した例では、ユーロ/ドルは当日わずか0.13%上昇しただけだが、ユーロ/円は1.1%急騰—これは前者の8倍に相当する。これが、プロのトレーダーがこの過小評価された取引銘柄に注目している理由だ。

二大通貨の背景と地位

ユーロの歴史は1999年に始まる。当時、11のEU加盟国がそれぞれの通貨を放棄し、このスーパー通貨を採用した。2002年に実体のユーロが流通開始されると、瞬く間に世界第二の準備通貨となり、その地位はドルに次ぐものとなった。現在では、国際貿易や中央銀行の準備資産においても、ユーロの影響力は非常に大きい。

円の台頭はより劇的だ。1960年代、日本は資本項目の兌換性が乏しい小国だったが、その後の経済成長により世界第二位の経済大国となり、円も国際舞台に登場した。90年代のバブル崩壊後、日本銀行はゼロ金利政策を採用し、円は逆にアービトラージの対象となった—投資家は大量に円を借りて高利回り資産に投資したため、「避難通貨」としての地位も確立した。

簡単に言えば、EUR/JPYは「1ユーロで何円交換できるか」を測る指標だ。この比率の変動は、二つの経済圏の力関係を反映している。

なぜ交差盤は直物よりも有利なのか?

それは金利差取引にある。欧州中央銀行は継続的に利上げを行っている一方、日本銀行は超緩和政策を維持している。これにより、円を借りて欧州資産に投資すれば、金利差から利益を得られる。金利差が大きいほど、EUR/JPYの上昇圧力は強まる。

また、ユーロの動きは三つの要素に左右される:欧州中央銀行の政策、ユーロ圏の経済指標、日本との相対的な強弱だ。これら三つの要素は交差盤上で共振しやすく、ボラティリティを拡大させる。対して、直物のEUR/USDは二つの要素の相互作用にとどまり、変動要因は比較的固定されている。

さらに、交差盤は関心度が低いため、機関投資家の資金が少なく、非合理的なボラティリティが多く発生しやすい。これはテクニカル取引を行うトレーダーにとってまさに天国だ。

歴史から未来を見通す

EUR/JPYの今後の動向を理解するには、その成長軌跡を振り返る必要がある。

2002-2007の黄金期:ユーロ圏経済は北上し続けたが、日本は停滞。EUR/JPYは100から170近くまで急騰した。この時期の論理はシンプル—強者はさらに強くなる。

2008-2009の嵐:世界金融危機が発生し、安全資産への逃避が加速。円は避難通貨として需要が急増し、EUR/JPYは112まで急落—典型的な「リスク回避」イベントだ。

2010-2012の債務泥沼:欧州債務危機によりユーロは苦境に陥る。経済は徐々に回復したが、債務の影は消えず、EUR/JPYは波動の中で低迷し続け、94まで下落。

2012-2015の反発:欧州中央銀行が救済策を開始し、ユーロ圏は安定化。日本では安倍経済学が始まり、大規模な金融緩和で円は大幅に下落。EUR/JPYは149まで反発—政策の力を示す。

2015-2020の政策競争:欧州は利下げと量的緩和を進める一方、日本は「引き締め」に動き、欧州経済は鈍化。結果、ユーロは相対的に疲弊。

2020年以降の新時代:コロナ禍で世界的な緩和が進むも、その後インフレが襲来。欧州中央銀行は先行して利上げに動き、日本はまだ眠ったまま。金利差取引の需要が爆発し、EUR/JPYは長期上昇トレンドに入った。

今後何が起こるか?

未来のEUR/JPYの動きは、四つの大きな変数に依存する。

ユーロ圏の経済強さ:GDPの持続的成長、失業率の低下、インフレのコントロールが続けば、欧州中央銀行はタカ派を維持し、ユーロは支えられる。

日本銀行の政策転換:これが最大の黒天鵝だ。高インフレの中、新任の黒田東彦日銀総裁は超緩和政策の見直しを始めている。一旦利上げが始まれば、金利差取引の長期好景気は一気に終わる。EUR/JPYにとって致命的な打撃となる。

地政学リスク:重大な国際情勢の変化は、避難資金を円に流入させ、EUR/JPYを押し下げる。

コモディティ価格:エネルギーや食品の価格上昇はインフレ期待を高め、欧州中央銀行の立場を間接的に支えるが、日本銀行の行動を促す可能性もある。

現状では、短期的にはEUR/JPYは再び上昇余地があり、昨年10月の148.4を超える可能性もある。ただし、中長期的には、日本銀行が本格的に引き締めに動けば、この通貨ペアは10年規模の熊市に突入する可能性が高い。

実用的な取引ツール三選

経済指標カレンダーの威力

毎月のCPI、GDP、失業率の数字を侮るな。これらの数字が予想外に動けば、その国の通貨は即座に上昇する。例えば、ユーロ圏のCPIが予想を上回れば、市場は欧州中央銀行の積極的な利上げを織り込み、ユーロは急騰。逆もまた然りだ。重要なのは、データ発表前に準備を整え、結果に応じてポジションを調整することだ。

中央銀行関係者の発言の「暗号」

中央銀行総裁や委員会メンバーの公の発言を軽視するな。「利上げを堅持」「忍耐強く」「更なる観察が必要」などの表現は一見普通だが、実は政策の方向性を示唆している。欧州中央銀行のタカ派的な発言が続き、日本銀行が「緩和必要」と語るとき、EUR/JPYの上昇エネルギーは明らかだ。

テクニカル指標の確認シグナル

RSI戦略:RSIが70を上抜けて買われ過ぎ領域に入り、再び70を下回ると、これは信頼できる売りシグナルだ。逆も然り。この指標の最大の利点はシンプルで直感的な点にあり、フェイクシグナルが少ない。

MACD戦略:ゴールデンクロス(短期線が長期線を上抜け)で買いの勢いが始まり、デッドクロス(逆)で売り圧力の到来を警告。中期トレンドの転換点を捉えるのに適している。

例として、2022年3月中旬にMACDのゴールデンクロスが出たときに買い、4月上旬のデッドクロスで決済すれば、わずか19取引日で5.89ユーロ/円のスプレッドを獲得できる。100,000ユーロのポジションなら、利益は589,000円に達する。

実践取引ガイド

短期トレーダーは次のように行動すべきだ:

EUR/JPYの日足チャネルを追いかける。価格が上部抵抗に触れ、RSIが70を超え、MACDのデッドクロスが出たら、明確な売りシグナルだ。利確はチャネルの中央線やRSIの50に設定し、損切りは昨年12月の高値146.76を参考に。これらの組み合わせはフェイクシグナルのリスクを効果的に低減する。

中長期投資家は思考を切り替える必要がある:

短期の値動きではなく、日本銀行の政策転換の瞬間を待つことだ。確かな証拠が示されたとき、すなわち日本銀行が利上げに動くとき、長期の金利差取引の好景気は終わる。その時点でEUR/JPYの空売りは10年に一度の大チャンスとなるだろう。ただ、その瞬間が来るまでは、買いポジションを持ち続ける方が安全だ。

ユーロの動きは最終的に政策と経済のファンダメンタルズに左右される。テクニカルはあくまで正確なエントリーポイントを見極めるための補助だ。この論理を堅持すれば、短期のノイズに惑わされることはない。

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